花火


夏休みが始まって一週間。

俺達サッカー部には夏休みらしいこともなく、練習の毎日で。
しかも帰省するわけでもないので俺達は武蔵森に缶詰状態だった。

そんなある日の夜。

「渋沢。」

不意に肩を叩かれ、俺は目を開いた。
ベッドサイドに人影。

「…三上、か?」

「違う、俺だ。」

「……不破!?」

「しっ、大きな声を出すな。」

「な、何で君が…!?」

「それは後で話す。とりあえず、来てくれ」



不破は俺の手を引くと、人気のない廊下を走り出した。

(ここは松葉寮だよな?じゃあなんでこんなところに不破くんが?)

ぐるぐるする頭を必死に整理してるうちに俺は外にいた。
スリッパのまま外にいるのに違和感を感じたが、
それより自分の前を歩くこの少年のことがあまりに驚きで、

しだいになにもかもがどうでも良くなってきた。



「ここだ。」

立ち止まったのは武蔵森グラウンド近くの砂利場。

「不破くん…?」
「…もうすぐだな」

不破が腕時計を見つめた。
そして空を見上げるように指示する。

「…?」

俺が上を見上げたそのとき。

バアアァァ……・ン。

突如上空に大輪の花火が舞い上がった。

「誕生日、おめでとう」

不破の言葉にはっと振り返る。

「7月29日、0時ジャストだ。」

「…そうか、今日は俺の…」

7月29日…。
今日が自分の誕生日だったことなどすっかり忘れていた。


「ちなみにいまの花火は、俺のいとこからのプレゼントだ。」

「…いとこ?」

「企業家でな。話をしたら自分からも一発援助しようと言ってくれた。
…で、俺からはこんな安物なのだが」



そう言って手渡してきたもの…それは。


「花火?」


よくコンビニなどにある、いろんな種類が入っているあれだった。

「そうだ。お前らずっと練習の毎日でこういうものをやっていないのだろう?
たまには息抜きをするべきだと思うのだが。」

なにか間違っているか?と言うような顔で見上げてくる彼に、
俺はすがすがしい気分にさせられた。

「…そうだな。息抜きは必要だな。有難う。」

不破が用意してくれたろうそくに火を灯し、それを使って花火に火をつけた。


バアアアァァ…


まばゆいほどの閃光が俺達のいる空間を照らし出す。

不破と二人、しばらく色とりどりの光をながめ続けていた。





花火も残すところ線香花火だけになった。

二人で儚い光を見つめる。


「…俺の誕生日のためにわざわざ忍び込んでまで?」

「…藤代から、お前が誕生日なこと、練習ばかりで遊びにいけないことなどを
聞いたのだが、…結局これしか思いつかなかった」


線香花火を光らせながら、不破はじっと俺の顔を見つめた。

「いや、最高のプレゼントだよ、ありがとう」

「…もう一つ、これはプレゼントというにはおかしいものかもしれんが…」




+++++++++



「昨日、突然花火がさあ!!」

「どっか祭あったっけ?」

「真夜中だぜ??」


翌朝、深夜の大花火に寮内は騒然となっていた。

「おはようございます〜…あ、渋沢先輩!昨日不破ちゃんとたどり着きました??」

「…やっぱり寮内に引き入れたのはお前か!?」

「俺は寮の地図と大浴場の窓のこと教えただけですよ。
にしても、不破もやりますね。大花火だなんて」

「あれはいとこさんからのプレゼントだ。不破からはもっといいものを貰った」

「え?何貰ったんですか!?」

「…秘密だ。それより、お前からはなにがもらえるんだ?」

「え!?」

俺の切り返しに動揺している藤代を見つめ、俺は昨日の夜を思い出していた。



+++++++++



誕生日おめでとう。

そういってそっと触れてきた不破の唇は
外温よりも、しっとりと熱かった。



…最高のプレゼントを、 

ありがとう。




Happy Birthday Katurou Sibusawa。


++++++++++++++++++

2003/07/29 UP


渋沢くん、誕生日おめでとう。
というわけで、というわけなのですが。

…なんだそりゃ?な話でスマソ!!!!
夏祭り歌いながら書くもんじゃネエ、ってかんじですかね?(笑)

初小説で初不破渋なのですが(笑)
なんというか、いつものそういうネタとは根元が違うような気がします。
なんていえばいいのかな?
表現しにくいんですが。

やっぱり中学生ですしね(笑)

メンタルな部分重視の、恋、ともいえないような…変?(笑)
友達以上、恋人未満、というか。
親友の、色違い、というか(笑)
そんな関係な二人が書きたいな、なんて(笑)



感想等頂けると嬉しいです☆