リークスが消えて。
猫たちはそれぞれの生活に戻っていた。

バルドは相変わらず宿の主人としてのんびりとした生活を送っていた。



 白猫さんのお手紙



「こんにちは」
「コノエか…久しいな」

全てが終わって、コノエはアサトと一緒に旅をしているようだった。
なくなった右腕は痛々しかったが、彼らの元気な姿を見ると癒された。
久しぶりに顔を覗かせたコノエは、なにか面白いことがあったのか鍵尻尾をパタパタと震わせている。

「…なにかあったのか?」

そう言ってやるとコノエは楽しそうにアサトを見上げた。
アサトもうなづいて小さく含み笑いをしている。
相当面白いことがあったようだ。

「ここ来る前に森でライに会ったんだ」
「へぇ」

ライは相変わらず賞金稼ぎとして祇沙を駆け回っているようだった。
藍閃に寄るときは大概バルドの宿を使っている。

「なに持ってたと思う?」

唐突にそういわれてもなにも思いつかない。

「なんだ?新しい剣でも手に入れてたか?」

そう言うと、コノエはにこにこと首を振った。

「…ヒントは、手紙…だ」
「いや、アサト…それ、ヒントじゃなくて答えだ…」

「手紙?」

アサトの言葉にコノエは肩を落とす。
バルドは手紙のなにが珍しいのかと二人を見上げた。
コノエはちょっとつまらなそうに肩を落とし、それでも口元に笑みを浮かべたままバルドを見た。

「ライの奴、雌の名前の書いてある手紙持ってたんだ」
「…雌の?」
「そうだ。宛先が雌の名前だった」

…雌に当てた手紙ってことか?
……あのライが…雌に…手紙……?

「…それって、ラブレターじゃねえか?」
「バルドもそう思うだろ!?」
「本当かよ!!ちょっと詳しく話せよ!!」

最近のライは随分猫が丸くなって、昔のようにとまではいかないが話しかけると返事は返してくれるようになっていた。
…そうか。奴にも春がきたか。
俺に相談も無いなんて水臭い。
バルドはゆるむ頬を隠しきれず、二人を交互に見た。

「ここに来る途中に会った…ってことは、どっかから戻ってきたってことか?」

ここ数日ライは宿に顔を出していない。
ってことは藍閃にはまだきていないんだろう。

バルドの言葉にアサトが少し考えてうなづいた。

「多分西から戻ってくるところだったと思う」
「西…つうことは刹羅の方角だな」

ということは地元猫か?

「声かけて話してたらこう、ヒラッと懐から手紙が落ちたんだ。さっと隠しちまったけどしっかり宛名が見えてさ」
「あの名前は雌だ。間違いない」

やっと読めてきた。
刹羅の猫なら、同じ村出身のバルドが知ってる猫かも知れない。
そう思って二人はバルドに話しを持ちかけたんだろう。

「で、なんて名前なんだ?」

そう聞くと、二人は期待に満ちた目でバルドを見た。

「あのな…」
「ああ」
「…シェリルって言うんだ」
「へえ、シェリル……・・・・・・・・・なに?」

その名前にバルドは身を硬くした。
それもそのはず…シェリルというのは…・・・
そんなバルドの様子に気づかず、楽しそうにその名前を繰り返した。

「シェリルだよ。シェ リ ル !かわいい名前だよな」
「知ってる猫でそんな名前のやついないか?」
「…シェリル…ねえ」

汗が滝のように滴り落ちる。
なんで奴がその名前の書いてある手紙を持ってるんだ!!
そう叫んでみても今の二人にその事実を知られるわけにはいかない。

「し・・・知らんなあ…」

「…そうか、残念だ」
「どんな猫なんだろうな」
「綺麗な名前だ、きっとライに負けないくらい真っ白な雌なんだろう…」

汗を垂れ流すバルドを置いて二匹はまだ見ぬシェリルに想像を膨らませていた。



「…さて、そろそろ買出しに行かなきゃならん。お前らは今日泊まるのか?」
「ああ、お願いする」
「じゃあここに名前を…」

ようやく話をそらして、バルドは小さくため息をついた。

と、宿の扉が小さく開く。

「いらっしゃ…!!!!」

中へ入ってくる猫を見た瞬間、バルドの身体の毛が全て逆立った。

「邪魔する」
「…ライ!!!!」
「…なんだ、貴様ら」

いっせいに見られて、ライは困惑したように右目を引き絞った。

「い、いや、…さっきぶりだなぁって…」

コノエがらしくない嘘をつく。
ライはじろりと二人を見て、バルドに近づいた。

「…おう、泊まりか?」
「いや、ちょっと寄っただけだ…これを…預かって」

そういって、懐に手を差し入れる。


まずい。
いま渡されるのは本当にまずい。

「ち…ちょっと……ライ、こっちに!」
「…おい!!!バルド!?」

大慌てでライの腕を掴むと、バルドは厨房へと飛び込んだ。
そのまま扉に鍵をかけてため息をつく。

「…貴様、どういうつもりだ?」
「ち…ちょっとな…だって、お前…手紙…」

そう言うと、ライは一瞬きょとんと目を丸くして、次の瞬間楽しそうに目を細める。
耳が楽しそうに立っている。

「ああ、そういうことか」

そう言って、懐から手紙を取り出した。
そこには確かに「シェリルへ」と書かれていた。

「まだ奴らには話していないのか?」
「言えるわけ無いだろ!!」

頭をガシガシとかいて手紙を眺めた。
封筒に書かれたその字はライの字ではない…

「なんで母さんからの手紙なんか」
「刹羅に寄ったときにお前のお袋さんに渡されたんだ。…たまにはかえって孝行してやったらどうだ?」
「お前に孝行を促されるとは思わなかったな」

せめてもの嫌味にとそう言うと、ライは何故か一瞬顔を赤くして目をそらせた。

「…顔見世はしてやってるだろうが、馬鹿親」
「…あ?」
「…なんでもない。とにかく、渡したからな!!」

怒鳴ってライは厨房の扉から出て行った。
バルドは一瞬考えて、真っ赤になった顔を一生懸命仰いだ。



「なあ、ライ」

待合室に出てきたライに、コノエは声をかけた。
ライはじろりと二人を見る。

「なんだ」
「シェリルって、どんな猫なんだ?」

その単語にバルドが飛び上がった。
コノエのやつ、直球勝負に出やがった!!!
バルドは真っ青になってライを見た。

…言うんじゃねえぞ!!!??

その視線に気づいたのか、ライはちらりとバルドを見て口元を緩めた。

「シェリル、か…?」


沈黙が待合室に流れる。



「最高の猫だぞ。なんといっても、俺の初恋の相手だ」

「…!!!!????」

興奮に尾を逆立てる二匹と唖然と立ち尽くすバルドを置いて、ライは出て行ってしまった。


「…っ!!!聞いたかバルド!!!シェリルってやっぱりすごい美猫なんだろうな…」
「…あのライにあれだけ言わせる猫か…一度見てみたいな」


興奮してまくしたてる二匹に、バルドは机に突っ伏すことしかできないのだった。









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2006/11/9

バルライでした!!
…え?ライバルじゃないかって?
いや、むしろどっちでも…(笑

シェリルネタが出たときに思ったのは
「絶対にライはバルド=シェリルっていうのを知っている」ってかんじで。
で、ついでにシェリルが初恋とかだったら面白いなあ。と。

その話はまた、次にでも書きたいなあ。と。。。

ちなみに。なんでアサコノなのかというと…あの二人は若いので興味深々に世界を見ていくような気が…(笑
本来のEDとはちょっと雰囲気違う二人ですみません(汗笑