魂の錬成は、成功した例が少ない。
しかし未だ成功例のない人体錬成に比べ、その確立は高いという。
現に、鋼のの弟は目の前に存在していて、私を誘惑する。

せめて、魂だけでも、私の元に戻ってこないか、と。


誘惑に打ち勝つには、そのときの私の心は弱すぎた。



魂の器




「で、結果がこれ?」
「…っ・すまな…ぶふっ」
「自分で定着させておいて笑うんじゃねえ」
「や・やめろ!その姿で腰に手を当てるな!…可愛過ぎる!」

笑いを堪えきれず涙を零すロイの前には犬のぬいぐるみが一つ、腰に手を当てロイを見上げている。
両手に抱えるほどの大きさで、茶色の毛並み、口元から腹へは白い毛で、手足も同じく白。
黒く大きな目がぎろりとロイを睨んでいた。

「仕方ないだろう、適当な入れ物がなかったのだから」

指に巻いたばんそうこうを見せながらロイは怒り心頭のそれに言い聞かせる。

「だからって、こんな汚いぬい…」
「…ヒューズ。そのぬいぐるみはエリシアちゃんからの貰いものだぞ」
「…エリシアから!?」

そう叫ぶとぬいぐるみ…改めヒューズは自身の身体をゆっくりと眺める。
そしておもむろに自身の身体を抱き締めた。

「エリシア〜っ!」




「落ち着いたかね」
「…まあまあ」

叫ぶに叫び倒し、転がるヒューズをつつく。

「ところでなにか異常はないか?」
「…特には。っても感覚はねぇからなんとも…あ」

じっとロイを見上げ、眉間にしわをよせる。
なにかあったのかとロイもぎょっとしながら近づいた。

「なんだ?」
「…視界があまりよくねぇな」
「…」

小さなねいぐるみにちょこんと、トレードマークのめがねが乗る。
人間のころ使っていたそれは、思いの外ちょうどよく犬の頭に収まった。

「よく持ってたな」
「前にお前がスペアを置いていっただろ。取っておいて正解だったな」
「…サンキュな」

眼鏡に残る涙のあとをそっと拭い、ヒューズはロイの手をにぎる。
ふわふわの手を握り返しロイはヒューズの小さな身体を抱き上げた。
そして自分はソファに座り、膝のうえにそれを置く。

「で、お前はなにを無くしちまったんだ?」

ぺたぺたと身体を触りながらヒューズはそう問うた。

「…なんの話だ?」
「だって、代価がいるんだろ?鋼のチビだって右腕を持っていかれちまった。俺の代価はなんだったんだよ」

真摯な瞳でヒューズはロイを見上げる。

「…」
「…」
「…お前には敵わないな、これだよ」

そう言ってみせたのは手袋のはまった右手。
錬成陣をあしらったその手袋は非常に見覚えがあった。
おもむろに親指と中指を合わせる。

「…っ、うわっ!」

     ぱちんっ。

ロイの膝から転げ落ち、頭を伏せたヒューズの耳に軽やかな音が爆ぜた。

「…っ馬鹿!お前なんて…危な…い…」
「危なくなんか、ないのだよ」

そう言って手袋を外す。

「…え?あれ?だって…焔は?」
「…お前の代価は、私の錬金術師としての力だったらしい。錬成陣を書いても同じだった…なにもおこらん」
「…そうか」
「本当は、どこでも引き換えて良いから、と思ったのだがな…身体はいたって無事だ」

ヒューズを抱き上げ、道化るロイ。
そんな彼の手を掴み、ヒューズは溜息をついた。

「…馬鹿言うな、お前がいなきゃ、戻っても意味ねえよ…ごめん、ありがとう」
「まあ、錬金術などなくとも、生活に支障は無い」
「…それもそうだろうが」
「私には、お前がそばにいてくれるほうがずっと大事なことだからな」

にやりとそう笑い、ロイはヒューズをゆっくり撫でる。

「…それを、照れないで言えたらもっとよかったな」
「う・うるさいっ!」

相変わらずな冗談を交わしながら、二人は笑った。


大変なのはこれから。

でも、なんでも大丈夫、そんな気がしていた。



◇◆◇◆◇◆


2004/01/31 UP


大佐とのメールで、
「ヒューズの魂を練成したら」
という話で盛り上がり、ついつい書いてみました☆

ぬいぐるみなので、練成陣はきっと布に血文字を書いて、ぬいぐるみの中に縫いつけ、かな。とか
代価はロイの錬金術の力と、+a、かな。とか
いろいろ考えをめぐらせて萌え萌えしてみたり。

個人的には夜は魂だけの存在でも構わないので人間型になってくれると
あたし的にもロイ的にも助かるな、とか。。。
(下ネタな心配なぞせんでもいい)

アホだよ…

しかも、これ、続きます(笑)


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